ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
私は心の中で驚く。


無数の本を読んできたはずの野口さんまで、こんな反応?



いったい、朝比奈光太って、どれだけすごいものを書くわけ?



最近の新人作家なんて、大したものを書くやつはいない。


どこかで読んだような、ありふれた低俗なストーリーばっかりだもの。


そんなもので時間を浪費するくらいなら、大正や昭和前半の作品を読んだほうが絶対に身になる。



常々そう考えている私は、自分の仕事に直接関係する作家のものじゃなければ、ほとんど読まないのだ。




内心の戸惑いを隠しつつ、




「ええ、そうなんです。

勉強不足で申し訳ありません。

タイトルを教えていただけますか?

急いで読ませてもらいますので」




と言うと、野口さんはデスクの引き出しを開け、一冊の単行本を取り出した。




「これ、貸してあげるよ。

書庫から探すのも手間だろうし。


ぜひ読んでよ。

きっと度肝を抜かれるよ」




私は小さく頷いて、本を受け取った。



思ったよりも薄くて軽い。


長編というよりは、中編に近いかもしれない。




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