ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
私は自分の席に戻り、ふう、とため息を洩らした。


今度の担当作家は、どうやらかなり面倒な先生のようだ。



デビューしてから三年で、書いたのは短編一作だけ。


あれだけ大きな新人賞を獲っておいて。


まったく、出版界を舐めてるわね。



私が勤めているこの出版社は、『真栄社』という。


まぁ、本好きを自称する人間なら、知らない者はいないだろう。



もちろん、売り上げランキングで常に上位を占める三大巨頭には及ばないけど。


あの三社の売り上げの高さは、漫画や雑誌に力を入れているからだ。



我が真栄社は、どちらかというとお堅い文芸作品が中心。


まぁ、時代の流れには逆らいきれなくて、ライトノベルや少女向けの小説も出してはいるけど、やっぱり世間的なイメージは「真面目な出版社」って感じだと思う。


だからこそ、うちの新人賞は、文学界ではかなり定評のある賞なのだ。


真栄社新人賞を獲った作家は、ある程度は将来が約束されている。



だからこそ、喉から手が出るほどにこの賞を欲しがっている作家の卵たちは、星の数ほどにいるのだ。




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