ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
それなのに、『朝比奈光太』は、新作も書かずに、女の家に入り浸っているって?




「………ふざけんじゃないわよ」




ちっ、と舌打ちが自然と出た。



そりゃ、賞が獲れない作家には、それなりに落ち度ーーー運の悪さやら才能の無さやら詰めの甘さやらがあるわけで、

そういう作家に対して申し訳ないと思わないの?なんていう偽善的なことは言うつもりないけど。



それにしたって、新人賞に選ばれたっていう幸運を無下にするなんて、ほんと、舐めてるわ。



私はむかむかしながら、野口さんから借りた朝比奈光太の処女作を手に取った。




ぱらぱらとページをめくる。



しばらくして、私は一番初めのページに戻った。


それから、1ページずつめくっていく。



気がつくと、いつの間にか、周囲の音が消え去っていた。



私の目は、白いページに刻まれた文字に釘づけになって、


私の頭の中は、たくさんの言葉が溢れかえって、


私の心は、その本の中に描かれた世界に奪われていた。




< 49 / 286 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop