ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
「…………なに、これ………」




知らず知らずのうちに、私は呟いていた。



全身の肌が粟立っている。


ぞくぞくと走る戦慄が収まらない。




「すごい…………」




あっという間に、最後の1ページまで読んでしまった。



それでも、まだ、その世界の中に浸っているような気がした。


まだその世界から出たくないと、私の心が訴えていた。




「なんなの? この小説………。

こんなの、読んだことない………」




私は、もう一度読み直したいような衝動を必死に抑えた。



しばらく、呆然としたまま、その表紙を凝視する。




ーーー美しい小説だった。


美しくて透明な言葉ばかりで紡がれた、幻のような、夢のような、ひどく綺麗な………。




「………朝比奈、光太」




このひとの目が見ている世界は、どんなに美しい世界なんだろう?



私が住んでいるのと同じ世界に生きているとは、とうてい思えなかった。




この小説の中には、きれいなものが溢れていた。


彼の見る世界には、きらきらと煌めく、透明で澄んだものしか存在しないかのように。





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