ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
彼らが歩くのは、決して風光明媚な土地ではない。


むしろ、荒れ果てて、涸れ果てて、実りのなくなった、世界の果ての荒野のような場所だ。



当然、人々の心も荒んでいる。



男と少女は飢えているのに、食べ物を恵んでくれる者は誰ひとりいなかった。


あまつさえ男は、無実の罪を着せられて、村人たちから殴られたこともあった。


渇きに耐えきれなくなって井戸水を飲もうとした少女は、捕まって女郎屋に売られかけた。



本当に、ひどい場所だ。


たくさんの冷酷な扱いを受けながら、男と少女は、手と手を取り合い、どこかへと向かって旅を続ける。



それなのに、男の目を通して見た世界は、あまりにも美しいのだ。



それはもしかしたら、男と少女の心の奥深くでの繋がりのせいかもしれない。


二人は会話を交わすこともないし、特別お互いを思いやるような言動もない。



それでも、二人が互いを信頼し合い、互いを失えば生きていけないというほどに依存し合っているのが伝わってきた。




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