ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
私は我に返り、こほんと咳払いをした。




「………とにかく。

我が編集部では、朝比奈先生の新作を心待ちにしているんです。

書き下ろしで出させていただきますし、朝比奈先生の新作をぜひ映画に、という声もいただいているんです。

一年以内、できれば半年以内には出版にこぎつけて、ほぼ同時に映画化の広告を出せば、確実に100万部は」



「ソウコさーん」




私の熱い弁舌は、間抜けな声に唐突に遮られた。


朝比奈先生だ。


先生はごろりと上半身を倒し、隣のソウコさんの肩に頭をのせ、甘えるように言う。




「俺、のど乾いちゃった。

いつもの美味しい紅茶淹れてよ」



「はいはい、仕方ないわねぇ」




ソウコさんは先生の頭を軽く撫でる。


先生は嬉しそうに相好を崩し、



「ありがと。ソウコさんって最高」



とキスをした。


目の前で他人のキスシーンなんぞ見せられる羽目になるとは………。



私はため息をこらえきれなかった。




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