ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
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朝比奈先生のマンションに戻り、部屋の中に入った瞬間。
「………きったな!」
私は大人の分別を完全に失い、心の声をそのまま口に出してしまった。
相手は作家先生。
ご機嫌を損ねるようなことを言ってはいけないのに。
でも、朝比奈先生は「でしょ?」などと呑気に笑っている。
助かったといえば助かったけど、苛つくことも確かだ。
「………今まで、たくさんの先生方の部屋を見てきましたけど。
作家先生方はあまり片付けをなさらない方が多くて、汚い部屋は多かったですけど。
ここまで汚いのは初めてです………」
私が低くそう言うと、なぜか先生は嬉しそうに手を叩く。
「えっ? 俺、君の『ハジメテ』奪っちゃったってこと?
うわぁ、光栄だなあ」
ーーーダメだ、こりゃ。
私は説得を諦めた。
この人に真面目な話をしても無駄だ。