ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
でも、そんなことは言っていられない。


だって、私は朝比奈光太の担当編集者だから。



だから、愛想を振りまいて手を擦り合わせて、這いつくばってでも、小説を書いてもらわなければならないのだ。




「………分かりました。

光太郎さん、お部屋のお片づけをさせていただいてもよろしいでしょうか?」




私がプライドも何もかもかなぐり捨ててそう言った瞬間、朝比奈先生は輝くような笑みを浮かべた。




「もちろんだよ、智恵子!

ありがとう、頼んだよ」




額の端あたりに青筋が立っていないか心配だ。



どうしてこんなにちゃらんぽらんなのか。


こんな男、会ったことも、見たことも聞いたこともない。



腹わたが煮えくり返りそうな思いを胸の奥にひた隠し、私はごちゃごちゃとした部屋の掃除を始めた。



部屋の片隅に無理やり隙間を作り、テーブルの上の本をきっちり揃えて移動させ、積み重ねるように置いていく。



テーブルが終わったら、今度は床のほうに取り掛かった。




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