ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
先生は目を見開いたまま首を傾げて、私をじっと見ている。



私は、答えを聞くまで引き下がるつもりはない、と示すように、何も言わずに見つめ返した。



しばらくして、先生がゆっくりと口を開く。




「………あのねぇ、俺はね。

書かないんじゃないよ。

書くものがないんだ」




ーーー書くものがない?


何を甘えたことを言っているのだろう、この人は?


プロの作家のくせに。



私は苛立ちを抑えつつ、眉をひそめて続きを待つ。




「だって、言葉って、溢れてくるものだから。

搾り出したりするものじゃないから」




先生はなぜか、くす、と笑いながら言う。




「書きたいものがないのに、無理やり言葉を搾り出して繋げて形にしたとしたら。

………それは俺にとっては小説じゃない」




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