ひまつぶしの恋、ろくでなしの愛
何をふざけたことを言っているんですか。


あなたには書く義務があるんです。



たくさんの業界人が朝比奈光太の新作を虎視眈々と狙っていて、

どういうふうに商業的に活用しようかと考えを巡らせているんですから。



全国のファンが、もう何年も首を長くして、あなたの次回作を心待ちにしているんですから。



若くして賞を獲ってベストセラーを世に送り出したあなたは、星の数ほどいる作家の卵たちの希望の星なんですから。



甘えたことを抜かしていないで、搾り出してでもなんでも、とにかくさっさと書いてくださいよ、新作を。





………そう言いたいのに。


私はなぜか、気圧されたように、なにも言葉を出せずにいた。




そのとき、不意に能天気な着信音が響き渡った。



先生が「あ」と声を上げて、ポケットに入れていた携帯電話を取り出す。




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