花の下に死す
 「……あれは、化け物だな」


 屋敷を出て通りを歩いていた時、清盛がつぶやいた。


 「化け物?」


 義清は恐る恐る尋ねた。


 「もちろん、待賢門院さまのことさ」


 「……どういう意味だ」


 その名を耳にするだけで、義清の胸は不思議と高鳴った。


 「崇徳帝は今年二十歳。そんな大きな御子のおられる女人には到底見えなかったな。あのお方は」


 「……」


 瞼に焼き付いている。


 御簾の外の世界を見つめる、あの美しいお姿が。


 「待賢門院さまご自身も、間もなく四十に手が届く御年であり、もう決して若くはない。なのにあのように美貌を保っているとはやはり……化け物としか言いようがない」


 この時代、高貴な女性のほとんどが、十代前半で嫁ぎ、子を産んだ。


 四十ともなればもう孫がいても不思議ではない……かなりの高齢だった。
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