花の下に死す
 「あの夏の日、いつものように寝る前に院は昔話などを語ってくださったの。その日は物の怪の話で。怖がって眠れなくなった私をあやすうちに、もう怖がることなどないと優しく抱きしめてくださり……」


 いつも泣き伏してばかりで、義清の問いかけにもろくに答えない璋子が、白河院との馴れ初めに関しては饒舌に語ってくれた。


 はじめて愛された夜のこと。


 どのように抱かれ、そして応えたか。


 やがて五十歳も年が離れた二人の仲は、御所内でも噂されるようになり……。


 体面を守るために白河院は、すでに天皇に即位していた孫の鳥羽院に璋子を嫁がせた。


 いきなり白河院から引き離され、年下の鳥羽院と床を共にしなくならなくなった時、どれだけ不安だったか。


 不安なあまり気鬱の病で床に伏し、鳥羽院を避けたり白河院の元に帰りたいと駄々をこねたりもしたのだが。


 白河院に天皇の妃としての役割を諭され、ようやく鳥羽院との間に子供を作ることができた。


 ……などなど璋子は、いかに自分にとって白河院が唯一かつ偉大な存在であるかを告げてきた。


 聞いているうちに義清は、気分が悪くなってきた。
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