叶う。 Chapter2
演奏をしている間私はずっと和也を想い、傍で和也が聴いてくれているような気持ちで鍵盤を弾いた。
和也に触れるように、優しく、愛しく、時に強く、ただひたすらに幸せな気分で音を繋ぎ合わせた。
聴いてくれている人達が、どうか沢山の愛に包まれるような気分になってくれるように、鍵盤を弾いて音を奏でながらそう願った。
それはあの子が、そう願って練習していたからだ。
ほんの少しだけ、あの子にもこのメロディが届きますように。
演奏はクライマックスに突入した。
更に激しくなる指の動きに、私は汗が流れ落ちるのも構わずに最後まで音を一つも外す事なくきっちりと演奏を続けた。
次第に早くなる呼吸がとても苦しくなったけれど、私は集中力を途切れさせる事なく、最後の最後まで全力でピアノと向き合った。
そして最後の小節を奏でると同時に、ペダルから足を離して鍵盤から腕を持ち上げた。
微かに残る残響が、段々と音を潜めて消えていった。
指先が小刻みに震えていた。
だけれど私はしっかりと立ち上がり、姿勢を正してまたピアノの前に立った。
そして、またゆっくりとお辞儀をした。
途端、会場が割れるかと思うほどの盛大な拍手に包まれた。
こんなにも、大きな拍手は聞いた事がないと私は思った。
あまりの拍手の大きさに、堪えきれず私の両目から涙が零れ落ちた。