叶う。 Chapter2




私は審査員席に向き直ると、涙が零れ落ちるのも構わずにまたお辞儀をした。

獲物はじっと優しい瞳で私を見つめながら、他の審査員と同じように私を拍手で労った。


私はそのまま踵を返し、シオンが待つ舞台袖まで姿勢を崩さずに歩いて行った。



だけれど、心はもう限界だった。

するべき事は、全てやりきった。


シオンは階段の前で、しっかりと私を抱き留めた。


「……良くやった。」


シオンのその言葉に、私は更に涙が零れ落ちた。

化粧が落ちるのも構わずに、私はシオンの胸で泣き続けた。


シオンはそんな私の腰に腕を回して、ふらつく私をゆっくりと舞台から遠ざけた。

出来る事は全てやった。
後は結果を待つだけだったけれど、私はもう結果なんてどうでも良くなってた。


とにかく、無事に演奏を終えた。


相変わらず涙は止まらなかったけれど、私はシオンにしっかりと支えられながら、控え室を出てホールに戻る道をゆっくりと歩いた。

ホールの入口にたどり着くと、そこには目を真っ赤にしながら私を待っているママと先生の姿があった。


「良く頑張ったわ。」


ママはそう言ってシオンから私を受け取ると、泣きながら私をぎゅっと抱き締めた。


「今までで、最高の演奏だったわ。」


先生も目に涙を浮かべながら、私の手を取りぎゅっと握手を交わした。

私はその言葉に、胸がいっぱいになって頷く事しか出来なかった。





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