叶う。 Chapter2




それから・・・

私が漸く落ち着きを取り戻したのは、高校生の部が終わる少し前だった。

ずっと泣き続けていたせいで、瞼がすごく重たかったけれど、ママがトイレでしっかりとメイクを直してくれたお蔭で私の顔は何とか泣いていたのが分からない程度まで回復した。

もう、何もする気が起きないくらい脱力していた私は席に座りながら、ずっとぼんやりと審査員席を眺めていた。

憎しみが込み上げるほどに、その男の顔を鮮明に記憶に焼き付けた。

だけれど、あれだけ完璧に演奏が出来たのだ。
あの男に影響される事なく、演奏を出来たのは間違いなくシオンのお蔭だった。

シオンが居てくれなかったら、私はきっと今この会場にすら居なかっただろう。
シオンは今も私の隣で退屈そうに舞台を眺めている。


それでも、私の手をずっと握ってくれている事に私はすごく安心感を抱いた。

和也みたいに、私を愛してくれる事はないだろうけれど、それでもこうしてくれるのは、あの子を本当に愛して居るからなんだろう。

愛を知らない私でも、これだけははっきりと分かる。


シオンのあの子に対する愛情は、間違いなく本物なんだろう。
私はほんの少しだけ、あの子が妬ましくもあり、羨ましくもなった。


それなのにあの子は、何故シオンの気持ちに気付いていなかったんだろう。
こんなにも愛されている事を、あの子は何故気付かなかったんだろう。




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