叶う。 Chapter2




それでも、もうどうしようもない。
あの子にそれを伝えてあげる事も、シオンとの約束を伝えてあげる事も、私には出来ない。

あの子は私の存在を知らない。

もしも、全てが終わってあの子が目を覚ましたとしても、私はあの子に自分の存在を認識させる事も正直に言うと出来ないんだと思う。

何故ならずっと頭の中で語りかけても、あの子は私の存在に気付かなかったから。

私と入れ替わる瞬間にあの子の意識はなくなる。
だからどんなに私が危険を察知してコントロールしようとしても、あの子は絶対に気付く事すらなかった。

それだけ鈍感だったのか、天然だったのか、はたまた頭が悪いのかはわからないけれど、恐らく自分の中に私が居るという事があの子には分からなかったんだろうと思う。


それに私も本気で教えようと思ったことはなかったので、もし本気で教えようと努力したら結果は一体どうなっていたんだろうかとふと思った。


だけれどその答えはやっぱり出ないので、私は考えるのを辞めた。


私はステージに視線を移した。

高校生部門はやっぱり圧倒的にすごい。
曲目も全てすごいけれど、何よりも迫力が違う。

多分、今演奏してきた人全員がピアノを選考した学校に通っているのだろうし、きっとそのまま音大へ進むのだろう。

私は正直ピアノを続けていく事は考えてはいるけれど、今は将来の事を考えることが出来ない。





< 203 / 458 >

この作品をシェア

pagetop