叶う。 Chapter2
そして他の二人を見ることすらせずに、シオンはスタッフに着いて控え室を出た。
きっとさっさと終わらせて家に帰りたいのだろう。
演奏をした時と同じく、舞台の階段の下で自分達が呼ばれるのを待った。
去年優勝した子のお母さんらしき人が、付き添いで一緒に居たけれど、もう一人の子は付き添いが居ない様子で落ち着かなく辺りを見回していた。
この子は去年居なかったから、きっと初めての授賞でとても緊張しているんだろう。
私は去年も一昨年も、一応入賞はしていたので自分でも驚く程に冷静だった。
その瞬間、会場で大きな拍手が起こった。
おそらく高学年部門の発表が終わったのだろう。
私達は係員の指示で、舞台の奥側の階段に向かわされた。
手前の階段から、花束とトロフィーを手にした子達が舞台を降りて各々の付き添いらしき人達と控え室の方に向かって行った。
「続きまして、中学生部門の授賞式に移らせて頂きます。」
未だに鳴り止まない拍手の中で、アナウンスがそう告げた。
その瞬間、会場内はまた静かになった。
シオンは私の耳元で「直ぐ傍にいる。」と小さくそう言って、私の手を離した。
私はシオンの目を真っ直ぐに見つめて頷いた。
もうあの男を見ても大丈夫だと思った。
多分、シオンもそう思ったのだろう。
だけれど、念のために一緒に来てくれたんだと思うと、珍しく感謝したい気分になった。