叶う。 Chapter2
「受賞者の入場です。皆様あたたかい拍手でお迎え下さい。」
アナウンスされたと同時に、スタッフが階段を上がってステージに向かうように指示を出した。
私はもう一度シオンを振り返り、その蒼い瞳を見つめた。
すると驚いた事に、シオンが優しく微笑んだ。
初めて見たその表情に、私はなぜかとても胸が苦しくなった。
どんな賞を貰うより、シオンの優し気な表情が見れた事の方が私にとっては嬉しかった。
いつも無愛想で無表情なシオンにあんな表情で見つめられたら、何だかとてもドキドキとしてしまう。
だけれどそれを表情に出さないように、私は他の二人と一緒に階段を上がった。
途端に盛大な拍手に迎えられた。
ステージの中央に置かれたピアノの前に、3人で並んで立つ。
あてられた照明が眩しくて、私は一瞬目を細めた。
私達はそのまま会場に向かって一礼すると、審査員席に向き直り一礼する。
私はしっかりとあの男と視線を合わせた。
もう、震える事も、怯える事もなかった。
だけれど何故か、あの男は私だけをじっと見据えて微笑んでいる気がした。
気のせいだと思いたかったけれど、多分気のせいじゃないような気がする。
理由は分からないけれど、確かにあの男は私をじっと見据えて微笑んでいた。
未だ疎らな拍手の中、私は静かに深呼吸をして運命の時を待った。
さっきまでは全然緊張しなかったのに、今は何故か心臓が鼓動を早めた。