叶う。 Chapter2
「あ、あいつに、大きくなったって言われたの‼」
私がそう言うと、シオンは歩くのを止めて私を見下ろすように見つめた。
「……それで?お前は何かを言ったのか?」
「ううん。ただ、少しだけ動揺しちゃったけど。」
「どんな風にだ?」
「どんな風にって?」
「あいつに、自分が叶だと分かる程に動揺したのか?」
私は黙って頷いた。
多分あの様子だと、分かっているだろうと思った。
そんな私にシオンは溜め息を吐いた。
「下手な真似はするなと言っただろ?」
吐き捨てるようにそう言って、目を細めて私を睨む。
「……仕方ないじゃない!いきなりそんな事言われたら、誰だって動揺するでしょ?」
「……俺はしない。」
「それは普通じゃないからでしょ?」
うっかり口が滑ったと思った。
シオンは普通じゃないけれど、それは言ってはいけない気がした。
「…………。」
案の定シオンは無言で私を見つめると、何も言わずにホールに向かって歩き続けた。
私は深く反省しながら、シオンの後を追いかけた。
シオンは普通じゃないけれど、だからと言ってそれを"まとも"じゃない私が指摘するのはおかしな話だ。
謝りたかったけれど、シオンの威圧的な背中に私はただ押し黙って後を着いていく事しか出来なかった。
結局私達は無言のまま、貴賓席に戻った。