天翔ける君



「なにがだ。言ってみろ」

どうやら千鬼は相談にのってくれるつもりらしい。

恵都と同じように桜を眺め、白い髪を風に遊ばせている。
ふわふわと柔らかそうで、恵都はいつか触ってみたいと思う。

いったいどのように話すべきか。
相談にのってくれるのはありがたいが、山吹のことだと知られるのは避けたい。

「……千鬼って好きな人はいる?」

聞いてから、分かりきったことだと後悔した。
結婚するのだから、その相手が好きに決まっている。

「なんだ、唐突に」

「私ってね、好きな人がいたことがないの。だからよく分からなくて」

「……異性を、ということか?オレだってそのような感情を抱いたことはない」

千鬼も恥ずかしいと思うのか、涼しい顔ではぐらかそうとする。

結婚するんでしょ?と聞いてみたい気もするが、なぜだかそれは躊躇われた。
というよりも、聞こうとしてもそれが声にならない。

「でも、千鬼って女の人たちに人気なんでしょ?前、山吹さんが言ってたよ」

思えば、千鬼とこういう方面の話をするのは初めてだ。
今まで多くの時間を共に過ごしたはずなのに、互いの恋愛沙汰に話が及ぶことはなかった。



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