天翔ける君



そして、額には二本の角があった。
さっきまでは確かになかったのに、黒い角がいつの間にか生えている。

「なるべく痛くないように食ってやるから」

恐怖と驚きで言葉が出てこない恵都に、千鬼が妖艶な笑みを見せる。

「人間じゃ、ないの?」

奥歯を鳴らしながら、恵都はやっとそれだけ言った。

「オレは鬼だ。人間を食う」

恵都はもうパニックで、考えが追い付かない。
一瞬夢かとも思ったが、顎に添えられたままの手の熱さがそれを否定する。

「お前はうまそうだ。だから持ち帰った」

千鬼が首筋に顔をうずめてくる。

硬直したまま動けないでいると、恵都はゆっくりと押し倒された。
いつの間にか両手がしっかりとつかまれていている。

見下ろしてくる千鬼の瞳はよく見ると内側から光が灯っているみたいで美しい。
けれど感情を感じさせない、赤いのにとても冷たい色をしている。


――ここで死ぬんだ。
食うというくらいだから、確実に死ねるんだろう。


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