満たされない心〜貴方が満たしてくれた〜
次の休み……私は東和病院にきていた。
懐かしい……
あの頃と何も変わってない。
『医院長にあいたいんですが…』
「失礼ですがお名前を……」
『前島結衣と言います』
「少々お待ちください」
……。
「只今、手術中ですので…あと1時間程で終わります」
『では、待ってます』
私はロビーの片隅で医学文庫を読んでいた。
誰がロビーに来たかなんて知らない
気がつかない……ガヤガヤしても私は本に集中する。
「お久しぶりだね……結衣さん」
私に声をかけてきた人
白髪の白衣を着た医者
康太が入院した時に担当してくれた人
『ご無沙汰しています、先生』
「まさか、本当に医者になるとは……ね」
『まだまだ研修医です』
「大学病院での噂は聞いているよ」
『?噂ですか?』
「あぁ……ガリ勉の優秀な研修医が恋をしたってね」
そう言いながら先生は笑っていた
それかよ……
『お恥ずかしいかぎりです』
『今日はお願いがあって来ました』
「ん……ココで働きたいってことかな?」
『はい……ここなら、康太を助けられる技術や経験を得ることが出来ると思っています』
「ん……康太くんには会ったのかい?」
先生の言葉に私は首を横に振る。