満たされない心〜貴方が満たしてくれた〜


次の休み……私は東和病院にきていた。

懐かしい……
あの頃と何も変わってない。

『医院長にあいたいんですが…』


「失礼ですがお名前を……」


『前島結衣と言います』

「少々お待ちください」


……。

「只今、手術中ですので…あと1時間程で終わります」


『では、待ってます』


私はロビーの片隅で医学文庫を読んでいた。
誰がロビーに来たかなんて知らない
気がつかない……ガヤガヤしても私は本に集中する。


「お久しぶりだね……結衣さん」


私に声をかけてきた人
白髪の白衣を着た医者
康太が入院した時に担当してくれた人


『ご無沙汰しています、先生』


「まさか、本当に医者になるとは……ね」

『まだまだ研修医です』

「大学病院での噂は聞いているよ」

『?噂ですか?』


「あぁ……ガリ勉の優秀な研修医が恋をしたってね」

そう言いながら先生は笑っていた


それかよ……

『お恥ずかしいかぎりです』


『今日はお願いがあって来ました』


「ん……ココで働きたいってことかな?」

『はい……ここなら、康太を助けられる技術や経験を得ることが出来ると思っています』

「ん……康太くんには会ったのかい?」

先生の言葉に私は首を横に振る。
< 132 / 205 >

この作品をシェア

pagetop