あなたに恋してる

「頑張るのは誰だってできるんだ。ちゃんと目標を持って結果を出せよ」

「もちろん、そのつもりよ」

「‥頑張れよ」

言葉とともに頭を撫で始める真斗の笑顔にときめいていた。

私‥この人のこと好きかも……


真斗はグラスのビールを飲み干すとマスターを呼ぶ。

「会計はまとめて今払うんで、後でこいつにもう一杯出してやってください」

「…いいわよ。自分の分ぐらい…」

「気にするな…お詫びだ。…またな…」

そんなことを言って優しい笑みを浮かべて帰って行った。

人の心をもち上げたり落としたりする真斗のツンデレぶりに私の心は囚われていた。





その日を境に週末になると真斗と待ち合わせをしたわけでもないのに偶然会うようになる。

そして、今日も当たり前のように私の隣に座っている。

でも、悠ちゃんと3人でいるとほとんど無口で、相槌を打つだけ……ときたま意地悪なことを言うくせに最後には優しさを少しみせてくれる。

今も、仕事から逃げ出したい気持ちでいる私を見破り、辛辣な言葉で真斗なりに励ましてくれる。

そんな真斗に私は支えられて3年間逃げ出さずにいれた。

そして、今年、歯科衛生士になった。
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