Love nest~盲愛~
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「えな様」
「……はい」
「今宵の食事は外食になさるそうです」
「外食?……分かりました」
「17時半に白川が迎えに参りますので、それまでにお支度の準備を」
「え?……私もですか?」
「はい」
「……分かりました」
今井さんから伝言を受け、彼なりの気遣いなのだと理解した。
『ありがとう』の代わりに外食に連れ出す。
普段、彼からの許可が無ければ屋敷から出ることも許されない身だから。
それでも、久しぶりの外食とあって、ほんの少し心が弾む。
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17時過ぎ。
彼が似合うと言った『白』を基調とした装いに仕上げて、髪はハーフアップに纏めバレッタでそれを留めた。
メイクは薄めにして、彼が用意したと思われる香水をつけて……。
以前、首筋に咲く赤い薔薇をストールで隠したら、機嫌を損ねてしまった。
羞恥心で隠してしまったのだけれど、彼との生活をする上では羞恥心は捨て去らなければならないと、その時悟った。
だから、沢山の赤い薔薇が咲き乱れようとも、もう隠そうとは思わない。
使用人たちの視線も殆ど気にならなくなった。
習慣って、時に恐ろしくもある。
袖がシースルーになっているシフォンのワンピースで、ハイウエストの切り替え仕様。
プリーツタイプのスカートは膝より少し長めで全体的に上品な雰囲気。
首筋の赤い華を引き立たせるように、あえてネックレスはせずに、揺れるタイプのシンプルなピアスだけつけて。
コンコンコンッ。
「はい」
「えな様、迎えの車が到着しました」
「分かりました」