Love nest~盲愛~

後部座席に座った私は、隣の席に置かれた箱に気が付く。


「白川さん、これは?」

「若様より、えな様への贈り物にございます」

「……贈り物」


『ありがとう』の代わりのつもりなのだろう。

食事に連れ出すのは口実で、これを渡すための外食なのかもしれない。

箱を開けると、中にはスマートフォンが入っていた。

もちろん、最新型のものだろう。

綺麗なラインストーンがあしらわれたケースに収まっている。

電源を立ち上げ、中を確認すると、既に数名の連絡先が登録されていた。

今井さんや白川さんなどの携帯電話番号、あの屋敷の電話番号、それと彼の携帯電話の番号も。

彼の家に住むようになって1カ月半。

漸く家族のような居場所を見つけた気がした。


「この番号を登録したのは、彼ですか?」

「……はい、若様です」


彼の登録名が『恋人』になっている。

私は買われた身のはずなのに。

冗談でも『恋人』だなんて。


『好きになれ』という言葉がリフレインする。

**

到着した先は珍しく数寄屋造りのお屋敷で、鹿威しがカタンッと心地よい音を奏でる枯山水の庭園が立派な料亭のようだ。

奥の部屋へと通され、襖が開かれた先に彼は既にいた。


「遅くなってすみません」


彼は私の言葉を無視するかのように挨拶もせずにノートパソコンで仕事をしている。

カタカタと規律のいい音が響くほど、室内は静寂に包まれている。

彼と向かい合う形で腰を下ろし、目の前にある彫刻のような綺麗な顔を暫し眺めていると。

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