Love nest~盲愛~
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「もうお仕事は、宜しいのですか?」
「帰宅したら、またする」
「……そうなのですね」
食事を終え、彼は会社へと戻るとばかり思っていたら、同じ車に乗り込んだ。
お酒を口にしたからだろうか?
私の隣に座った彼は腕組をして、目を閉じた。
「スマートフォン、ありがとうございました」
「……ん」
お礼を言うのを忘れていた。
車内に残しておいた空き箱を目にして思い出した。
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家に到着し、車から降りると、白川さんの手に彼のビジネスバッグが視界に入った。
「私が預かります」
「宜しいのですか?」
「はい」
私の声に反応するように彼がチラッと視線を寄こした。
けれど、何かを言うでもなく一瞥しただけ。
しかも、そのまま玄関の奥へと歩き出した。
その彼を追うように彼のジュラルミンケースを手にして後を追う。
彼の部屋の前まで来ると、いつもならパタンとドアが閉められるのに、今日は開けたままになっている。
入ってもいいのかしら?
「失礼します」
室内を見回しても彼の姿がない。
シャワーでも浴びに行ったのかもしれないと思い、ジュラルミンケースをソファーテーブルの上に置いた、その時。
「ッ?!」
背後から抱き締められた。
もちろん、彼に。
煙草の香りとアルコールの香りがふわっと鼻腔を掠めた。
「シャワーを浴びたら、部屋に来い」
「………はい」
耳元に甘く痺れるようなバリトンボイスで囁く彼。
毎日聞いていて慣れているはずなのに、その声音に胸が擽られる。
何度聞いてもときめいてしまって……。