Love nest~盲愛~
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自室でシャワーを浴び終え、髪も乾かし、滑らかな布地のネグリジェにガウンを羽織う。
スキンケアのみ施し、髪はバンスクリップで纏めた。
鏡で最終確認をして、呼吸を整える。
「うん、大丈夫」
自分自身に言い聞かせながら、部屋を後にする。
すぐ隣の部屋のドアまで歩いて数歩。
重厚感のあるそのドアをノックすると、中から彼の声が聴こえた。
室内に入ると、彼もシャワーを浴び終えたようで、寝衣姿の彼がソファーでパソコンに向かいカタカタと入力していた。
彼の傍まで歩み寄る。
パソコンの隣にはお酒の用意がしてあり、彼が目で合図して来た。
彼が飲むお酒を作ればいいらしい。
私は彼の右側に腰を下ろした。
彼の隣に座る時は、暗黙の条件で右側に座らなければならない。
車に乗る際も、後部座席なら右側、彼が運転する車でも右側が助手席のそのシートへ。
だから、ソファーの席も右側が空いている。
彼はオーソドックスにストレートのブランデーを好む。
だから、ブランデーはそのままグラスに注ぎ、チェイサーを作るのが私の役目。
ブランデーを注いだグラスを彼の右前方に置くと、彼がそれを手にして口にした。
「えな」
「はい」
「今日から支払いは口座に入れてあるから」
「口座ですか?……あ、それで、パスポートを?」
先日、今井さんから身分証明書を借りたいと言われ、パスポートを預けた。
身分証明書を他人に預けるのはどうかとも思うけれど、悪用するような人たちではないと思って。
スマートフォンの契約かと思ったのに……。
まさか、口座開設に使っただなんて、思いもしなかった。