Love nest~盲愛~
歯磨きを終えた彼が真横に立ち、私を見下ろしている。
「ここで寝るか?それとも、自分の部屋に戻るか?」
「………ここで」
「フッ」
いつもなら、即答で自室に戻ると口にしていただろう。
けれど、どうしてか……。
彼の事をもっと知りたいと思う自分がいる。
例え、お酒の力で関係を持ったとしても後悔はしない。
彼の事を好きになったら……というならば、返って申し訳ないくらいの状況のはず。
毎日のように大金を貰うばかりで、見合うことをしているとは思えない。
彼にとったら大した額ではないのかもしれないけれど。
私にとったら、一生を左右するような額だ。
彼がベッドに潜り込んで来た。
ふわっと寝具からムスクの香りが鼻腔を掠め、彼の気配がグッと近づく。
恐る恐る寝返りを打ち、彼の方に視線を向けると。
彼は仰向けで既に瞼を閉じていた。
その綺麗すぎる横顔をじっと見つめて。
常夜灯でも分かる、長い睫毛。
男性には贅沢すぎる長さだ。
スッと伸びた鼻梁。
形の良い唇。
いつ見ても見惚れるほどのパーツが目と鼻の先にある。
「して欲しいことがあるか?」
「へっ?」
いつだったか、同じ質問をされた。
確かあの時は……キスして欲しいと言えと言っていた。
キス……。
『好きでもない男からされるのは嫌だろう?』と彼は気遣ってくれたけれど。
今なら、彼と出来るだろうか?
嫌いではない。
怖いと思う事もあるけれど、以前に比べたら格段に減った気がする。
それに、好奇心もある。
したことのない『キス』というものに。
彼とキスしたら、この関係性も変わるのだろうか?
もしそうなら、キス……してみてもいい気がして……。
「キス、……して欲しいです」