Love nest~盲愛~


「ッ?!」


突然、左手首を掴まれた。

ベアトップのバルーンドレスを着ている私の腕は、完全に無防備状態。

いや、違う。

この密室とも思える部屋に2人きりでいる事自体、無防備と言える。


完全に思考が停止した状態で掴まれてる部分に視線を落とすと。

掴まれている腕がグイッと引かれ、次の瞬間には身体に軽い衝撃を受けた。


思いのほか硬くて、しっかりとした彼の胸に――――。


少し強めに掴まれている手首がジンと熱を帯び始め。

抱き寄せられる腰は、薄い布地越しに彼の体温を感じて……。

視界に捉えたのはゆっくりと上下する喉仏。

そして、耳元に掛かる彼の吐息が私の思考能力を急激に削いでゆく。


物凄い速さの危険信号が左胸から発信されると、


「お前の全てを貰う」


甘い痺れをもたらすバリトンボイスが、悪魔の言霊のようで抵抗する力さえも奪い尽くして。

必死に脳内で彼の言葉の意味を考えたものの、到底了承出来るものではないと弾き出された。


「あっ、あの……ご冗談………ですよね?」


旨くかわすスキルなんて持ってない。

だって今日初めてフロアに立って、貴方が初めてのお客様なのだから。


身体の拘束と思考を麻痺させるほどの甘美な声音。

これで顔を上げてしまえば、容易く唇を奪われ兼ねない状況で。

完全にお手上げ状態の私。


あかりさんから、ボディタッチはあると聞いていた。

やんわりかわす手ほどきを受けたが、今のこの状況では何の意味も持たない事くらい安易に理解出来る。


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