Love nest~盲愛~

視界の先に捉えたのは、一枚のしおり。

何てことないただのしおりなのに、それに見覚えがある。

だって、『2億5000万分の1』と言われる奇跡の7つ葉クローバーの押し葉しおりだから……。

7つ葉クローバーの意味が、無限大の幸福だと知った私は、父親におねだりして群生しているという場所へ旅行に連れて行って貰った事がある。

どうしても、押し葉にしてプレゼントしたくて。


何故、これがここに?

私と同じことを考えて、作った人がいるのかしら?

あまりにも遠い記憶で、台紙の色やリボンの色を覚えていないけれど。

私の記憶が確かなら、同じに思えてならない。


みさきお兄ちゃんに兄弟がいたのだろうか?

もしかして、親戚の人?

あっ、この絵本が古本で、偶々彼が買い取ったとか?

本を隅々まで確認してみたが、古本屋で売られていたような形跡は見当たらない。

誰かから譲り受けたのだろうか?

……この絵本を?


『西賀 哲平』、名前の一文字すら合わないのに。

けれど、王子様のような綺麗な顔立ちという点と手元にある押し葉のしおりが、ありえない確率の答えを出そうとしている。


不確かな記憶と目の前の現実。

脳内でおかしくなりそうなほど考え込んだ結果。

このしおりの持ち主の彼に直接尋ねるのが一番だと導き出した。


でも、もし彼がみさきお兄ちゃんだとしたら?

何故、名乗らないの?

そもそも何故、子供の頃に偽名を使っていたのだろうか?

私の名前は一文字も変わってないのに。

私のことを覚えていないとか?

子供の頃の面影もないだろうから、分からなくて仕方ないのかもしれない。

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