Love nest~盲愛~
元社長令嬢という肩書はとうの昔に捨て去った。
生きる上でそんな肩書、何の意味も持たない。
ううん、返って不都合になるだけ。
プライドが高いだの、人を見下しているだの。
その人の人格をも否定する言葉しか聞こえて来ない。
だから私は決めたんだ。
どんな事をしても生きてみせると……。
だって、母が命と引き換えに産んでくれ、父が必死に育ててくれたんだから。
決して粗末には出来ない。
例えそれが、人の倫理に反しているとしても―――――
「私は、…………安くありませんよ?」
同じ事をするなら、出来るだけ多く貰いたい。
だって、1日も早く人並みの生活をして、両親に狭苦しい場所から開放してあげたいから。
今は相部屋という事もあり、両親の位牌と遺影を鞄の中にしまっている。
同世代の子がそれを見てどう思うか分らないし、気味が悪いなどと言って捨てられても困る。
見るからにお金に困って無さそうだし、私の事なんてお金で買える虫けらぐらいにしか思ってないだろう。
だから、少しくらいは『慾』を出してもいいわよね?
命を絶とうと思えば、関係を持つ事くらい何てこと無い。
別に彼を騙す訳でもないし、お互いの利害が一致するだけ。
だから、今は何だってする。
私は、キスされる事を覚悟の上でゆっくりと顔を持ち上げた。