Love nest~盲愛~
緊張感は半端ない。
今にも口から心臓が飛び出るんじゃないかと思うほど。
でも、挑発したからにはどんな事にだって耐えてみせる。
必死に堪えようとしてもじわりと滲み出す目元。
自ら自分自身を売るような言葉を発してしまったのだから……。
黒曜石のように漆黒の光を宿し熱を帯びた瞳。
鼻先が今にも彼の唇に触れそうな距離にハッと息を呑むと、
「ならば、幾らだ」
「………っ……」
甘く蕩けるようなバリトンボイスは、仄かに煙草の香りを纏って……。
幾らって聞かれても困る。
自分の価値だなんて、お金に換算した事なんてただの1度も無いんだから。
けれど、私が提示した金額が彼にとったらポンと払える額だったら?
そしたら、私は……――――……
だけど、今の生活から抜け出せるのなら………。
我慢するだけの価値はある。
私は必死に最善の方法を考えて………。
「私の全てをとおっしゃいましたが、例えば?」
「全ては全てだ。他意はない」
「心も……身体も……という事ですか?」
「あぁ、勿論だ」
「っ………」
「24時間365日……全てだ。その瞳も……その声も、この手で触れる全てが私のモノだ」
「んッ?!」
この人、どうかしてる。
尋常じゃない!!
けれど、彼の監視付でも、命があるだけマシだと思えば――――。
「一発、100万でどうだ?」
「………へっ?」