Love nest~盲愛~


一発って、何?………もしかしなくても、アレな訳よね?

再び彼のトークペースに呑み込まれると、


「希望があるなら、ハッキリ言え」

「では……、庭付きの綺麗な家が欲しいと言ったら?」


人間、欲を出すとロクな事がないと言う。

だけど、堕ちる所まで堕ちるのならば、自尊心なんて無意味でしかない。


じっと絡み合う視線が不意に揺らいで。


「庭付きの家が欲しいのか?」

「…………例えばの話です」

「他に欲しいモノは?」

「………そうですね。不自由なく、静かに暮らしたい」


自由を手放すのならば、それ相応の対価を支払って貰わないと。


「フッ。ならば、お前の望みを叶えてやる」

「へっ?」

「この店を潰そうと思ったが、好都合だ」

「……………へ?」


あまりの衝撃的な発言に完全に思考回路がショートした。


何、この人。

常軌を逸してる。

店を潰す?

家を買い与える??

尋常じゃない、どうかしてる。


つい口から漏れた事が、とてつもない事態になってない?

アフターのお誘いかと思いきや、話の方向が脱線してない?


一気に血の気が去ってゆく。

粗相をしないように言われていたのに、粗相どころじゃないわ。

この店の運命をも握ってるんじゃないかしら?


「ご、……ご冗談ですよね?」


震える声で必死に訴えかける。

やっとの想いで見つけたお店なのに……。

お願いだから、お酒の席の戯言だと言って。


引き攣る顏で必死に笑顔を繕うと、


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