Love nest~盲愛~



ホテルを出て、待機している白川さんの車に乗らずに、私の手を握ったまま市街地へと歩き出す彼。

暫く歩いて、異変に気付く。


「哲平さん?」


少し前を歩く彼の背中が小刻みに震えていて、泣いているのかと動揺する。


「ごめんなさいっ、我慢するつもりが言い過ぎてしまって……」

「っ……フフフップハハハハハッ……」

「えっ……笑ってるんですか?!」

「だって、見たか?あのババアの顔、百面相みたいに顔色コロコロ変えて」


彼がこんなにも爆笑するとは思ってもみなくて、呆気に取られてしまった。


「えな、最高」

「んっ?!……哲平さん、ここ……路上ですっ!」

「気にするな、見せつけてやれ」

「っ……」


彼が軽々と腰を抱き上げ、子供をくるくると高い高いするみたいに。

映画のワンシーンのような一コマ。

通り過ぎる人々の視線を気にせず、彼は嬉しそうな表情を見せる。

彼が嬉しいのなら、それで満足。

私が出来ることなんてたかが知れてる。


「車は良かったんですか?」

「ん」


ゆっくり下ろされた私は、ホテル前に残して来た白川さんを心配した。


「欲しいものはあるか?」

「はい?」

「褒美に何でも買ってやるぞ」

「い、要りませんよ!十分買って貰ってますからっ!」

「遠慮するな。この店はどうだ?」


市街地に歩き出した理由はこれだったのかもしれない。

高級ブランドショップが軒を連ねる通り。

その中でもひと際目立つ高級ジュエリー店の前で足を止めた彼。

繋いでいる私の手を引き寄せ、有無を言わせず店内へと。

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