Love nest~盲愛~
現れたのは哲平さんの養母。
そして、彼女の視線は息子である孝之の組み敷く女であるえなに釘付けになった。
その手には、リビングのセンターテーブルの上に置かれているものと同じ薬物のボトルが握られている。
「どうするつもり?……その娘も?」
状況を把握しようと質問はしつつも、それほど驚いている様子はない。
これまでもあったような口ぶりだし、さして問題ないといった感じだ。
「あいつには勿体ないでしょ、上玉だよ、母さん」
「そうかもしれないけど……」
近々籍を抜こうとしている哲平相手に、その彼女を目の前で息子が手籠めにしようとしているのだ。
制止しようとはせずとも、さすがにそこまでしなくてもと思ったのか、一瞬だけ顔を歪めた。
「味見するくらい、バレやしないよ」
孝之はそう口にすると、母親に手を差し出した。
それを寄こしてと言わんばかりに。
母親は小さく溜息を吐きながら、息子の手に持っているボトルを傾け、手のひらからポロポロと零れ落ちる。
「お楽しみはこれからだから♪」
狂気の沙汰としか思えない。
息子も息子だが、母親も母親だ。
こんなイカれた親子に彼が10年以上も苦しめられていたという事実を肌を持って実感した。
掴まれていた顎が正面を向かされ、口元に鷲掴みにした薬が近づいた。
思わず口を真一文字にぎゅっと噛み締め、何が何でも口に入れまいと必死に抵抗を試みる。
「可愛い顔して抵抗するとか、そそられるねぇ」
「ッ……」
完全に据わっている目が、恐ろしいほどに細められ、口角が鋭く持ち上がる。
「もう帰っていいよ、用があればまた連絡するから」
「はいはい」
孝之が母親に軽くあしらった、その時。