Love nest~盲愛~

ワイングラスを手にしていた彼がグラスを置き、テーブルの上に置かれていた私の手をぎゅっと掴んだ。


「大学に再入学するか?」

「えっ?」

「まだ中退して2年しか経ってないし、経済的理由で退学したとしても、全期分を一括して払えば問題ないと思う」

「……再入学」

「再入学に伴って試験はあるだろうが、それほど難しくはないはずだ」

「……いいのですか?通っても……?」

「えながしたい事をすればいい」

「妻業が疎かになっても?」

「夜は家にいるだろ。俺の隣に寝てくれれば、それでいい」

「哲平さん……」


本当は辞めたくなかった。

父親が他界して、父の会社が人手に渡り、学費も払えなくなって仕方なく退学したのだから。

元々アクティブに動くのは苦手で、勉強は好きだし得意だった。

世間知らずな所はあるだろうけれど、突然奪われた青春は、未だに深い傷となっている。


「そうと決まれば、明日にでも手続きするか」

「でも、明日は哲平さんのお父様の会社の……」

「丸々一日かかるわけじゃないだろ。面倒な手続きがあるなら、弁護士に頼むし」

「哲平さん、行動派ですね」

「じゃなきゃ、社長業は務まらないぞ」


頭をポンポンと軽く叩かれる。

彼からしたら、私はいつになっても可愛い妹なのかもしれない。


「それと、俺もそうだが、これからは我慢しなくてい。やりたい事があればやればいいし、行きたい所があるなら連れてってやる」

「はいっ」

「大学は今からだと4月からになると思うから、それまでの間、少し時間があるし。挙式しに新婚旅行にでも行くか」

「挙式しに新婚旅行って…」

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