Love nest~盲愛~
煙草の香りを纏った影がゆっくりと降って来て、
「怖いか?」
「っ……」
「俺が怖いか?」
「………」
射竦めるような視線がほんの少し和らいだ気がしたが、それでも、あまりの至近距離に声を出す事さえ出来ずにいると。
骨ばった長い指先がゆっくりと髪を這い始め、同時に彼の口元が近づいて来た。
私は硬直したままギュッと目を瞑ると。
額部分に柔らかい感触を感じて、彼がそこにキスを落としたのだと認識した。
覚悟を決めた筈なのに。
あんなにも自分自身に言い聞かせた筈なのに。
大金の為に我慢すると決めた筈なのに。
身体は正直な反応を示す。
ギュッと瞑った瞼の隙間に涙が滲み。
硬直している身体が小刻みに震え出す。
左胸からは危険を知らせる警告音がけたたましく鳴り響く中。
私は身動き一つ出来ずに息を呑んでいた。
すると、
「えな」
「ッ?!」
「………えな」
「…………ッ?!!」
「お前はもう、俺のモノだ」
「っ………!!」
耳元に届いた甘いバリトンボイスは、私の本名を口にした。
思わず無意識に身体がビクッと反応したけど、店のオーナーだもの。
履歴書を見れば分かりそうなもの。
そして、『俺のモノ』という彼の発言に、再び身体がビクッと跳ねた。
額から耳元に到達した彼の唇がゆっくりと首筋へと伝って。
指先でツーッとなぞるように這わせたその先に、ゆっくりと唇が押し当てられた。