Love nest~盲愛~
洗面所の鏡に映った自分の首には、無数の紅い華が咲き乱れている。
元々色白な肌のせいか、くっきりと刻まれたような痕。
その元へと指先を這わせて。
『これが現実』なのだと、鏡の中の自分に何度も言い聞かせた。
この先何が起こるのか分らなくても、命さえあれば………。
例え悪魔と魂を交換する羽目になったとしても、決して後悔しない。
生きる事に意味がある。
この命がある限り、私は私だわ。
囲われた世界であっても、その中で幸せを探してみせる。
私は自分の心にそう深く刻んだ。
バラの花弁が浮かべられた大きな浴槽に浸かり、心の棘を削ぎ落す。
彼に従順でいる限り、きっと悪いようにはされない筈だわ。
さっきだってあんな風に優しく声を掛けてくれたし。
車の中でも気遣ってくれた。
私の何に興味があるのかは分からないけど。
愛想を尽かされない限り、この豪邸に住んでいられる。
今井さんも奥村さんも優しそうな人だし。
私が彼好みの女でいる限り、ここでの生活は維持出来るという事よね?
それならそれで話が早いわ。
我慢すればいいだけの事だもの。
心を殺して、じっと耐えれば済む事だわ。
上品な香りを纏うバスルームで、私は改めて新たな人生を歩む事を決断した。
古市えな 22歳、所持金2560円。
キャバ嬢の道を捨て、囲われる女へと成り下がった。
倖せという幻を夢見て………。