Love nest~盲愛~
翌朝。
嗅ぎ慣れない馨しい花の香りが鼻腔を掠め、滑らかな布地が頬を撫でる。
微睡む瞼をゆっくりと押し上げ、室内に差し込む柔らかい光を視線で辿る。
見慣れぬ景色。
嗅ぎ慣れない香り。
そして、明らかに上質な寝具の肌触りに、一瞬で脳内がクリアになった。
――――――ここは、西賀邸の一室。
私は昨夜ここへ連れて来られて、あの人と契約を交わした。
どんなモノを望んでいるのかすら想像も出来ないほど、今の自分が置かれている立場を逆算すると。
到底、一般人には理解しがたいモノなのかもしれない。
複雑な想いを抱きながら、ゆっくりと起き上がる。
自分以外誰もいない部屋。
何畳あるのかすら分からないほど広い。
朝陽が差し込む大きな窓には刺繍の施されたカーテンが掛けられている。
そのカーテンをほんの少し開けると、ちょうどエントランス前に1台の車が停車した。
見覚えのある車。
そう言えば、昨日このお屋敷に来た時に乗って来た車に良く似ている。
ううん、恐らく同じものだろう。
室内の壁掛け時計に視線を向けると、7時10分。
もしかして、彼が会社へ出勤する時間なのかしら?
ふとそんな事を考えた私は自分の荷物の中から服を取り出し、急いで着替えを済ませた。
水で顔を洗い、化粧水だけして部屋を飛び出すと。