Love nest~盲愛~


「ッ?!」

「早いな」

「えっ?…………そうですか?」


ちょうど隣りの部屋から彼が姿を現した。

生地に縦縞の織が入っているダークグレーのスーツ姿で。

カフスボタンを嵌めようとしていて、指先でボタンを抓みながら視線は私を捉えている。


頭の先から足の先まで見下ろすように。


化粧水しかしていない事に気付き、両手で顔を覆うと。


「ん」

「?」

「嵌めてくれ」

「っ!………はい」


私の目の前まで歩み寄った彼が、長い腕を突き出した。

ノーメイクの顔を隠すように俯きながら、彼の手首へと手を伸ばすと。


「ッ?!!」

「化粧してないと、ガキだな」

「っ………」


伸ばした腕をがしっと掴まれ、彼の胸元へと引き寄せられた。

当然、彼の長い腕に捕らわれて………。


「午前中は会社に行くが、昼になったら迎えを寄越す。何が食べたいか、考えておけ」

「…………それって、一緒に食べるという事ですよね?」

「それ以外、何の理由がある」

「っ………」


触れる部分が熱を帯びる。

強い力で抱きしめられては、逃げる事すら出来ない。


ううん、違う。

この人から、この場所から、逃げる事なんて出来ないのだから。

現実を受け入れるように自分に言い聞かす。



すっぴんを見られたくなくて、彼の胸元に顔を寄せると。


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