Love nest~盲愛~
食べる事に夢中になっていると、思わぬ所から視線を感じた。
それは、紛れもなく目の前の彼から。
テーブルに両肘をつき、指先を絡ませ、その部分に口元を寄せて。
その視線に気付いた私は、ハッと我に返った。
彼がご馳走してくれているのに感謝の言葉も、お料理の感想でさえ忘れていた。
時既に遅しなのだが、それでも必死に取り繕うと手にしているフォークを置いて。
「あまりに美味しくて、つい夢中になってしまいました」
震え気味の声で呟き、引き攣りそうな頬を必死に緩めて。
すると、彼はフッと柔らかい笑みを零しながら、甘美な声音でこう答えた。
「食べる姿は、リスみたいだな」
「へっ?」
「誰も取ったりしないから、ゆっくり食べろ」
「っ…………はい」
夢中になって頬張っている姿がリスに見えたらしい。
でも、呆れているようには見えない。
彼の気を惹きとめておかなければならないというのに……。
そんなハードルの高い事、本当に私に出来るかしら?
不安が脳裏を掠めながら、再びフォークを手に取った。
美味しい昼食を頂いて、食後の珈琲を口にしていると。
「そろそろ、出るぞ」
「あっ、はい!」
彼は、テーブルの上に置かれた腕時計を手にした。
そして、それを着け終えると、パソコンをジュラルミンで出来たビジネスバッグに入れた。