Love nest~盲愛~


どこからともなく優しい音色が聞こえて来た。

すると、使用人さん達の表情が一瞬で変わり、皆きびきびと動き始めた。


「えな様、坊ちゃまがもうじきお戻りになられますよ」

「えっ?」

「先程のメロディーは、白川が帰宅の合図を入れたものになります」

「…………なるほど」


このお屋敷には、そういうシステムがあるのね。

だから、皆の表情が一変したんだわ。


「私は何をしたらいいのかしら?」


手元の残り花を纏め上げて尋ねると。


「そちらは私がお預かり致します。えな様は、お衣裳をお召し替え下さいませ」

「えっ?」

「お部屋のクローゼットに用意してございますので、お好きな物をお召しになって下さいませ。先日、坊ちゃまとお出掛けになられた際に白川より預かったお品にございます」

「………あぁ」


そう言えば、あの時、物凄い数の服を試着したっけ。

もしかして、あれが全部あるって事?

………まさかとは思うけど。

ううん、多分そうに違いない。

今井さんの指示を無視する訳にもいかなし、ここは素直に聞き入れておくべきね。

私は申し訳なく思いながらも、後片付けを彼女にお任せした。

そして、急いで2階へと向かった。



自室のクローゼットを開けると、やはりあの時試着した服がズラリと並んでいた。

どれもこれも素敵なものばかりで、選びようが無い。

あれこれ吟味してみるものの、彼との食事が思い出せない。

緊張し過ぎて、どんな感じに過ごしてたかしら……?


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