Love nest~盲愛~


記憶を辿ってみるものの、彼の視線を浴びていた記憶しかない。

ダメだわ。

彼との楽しい食事だなんて、記憶に無いもの。

それなら……。


私は今夜のメニューを思い出し、テーブルフラワーと食器との相性も考慮して。


「うん!これなら雰囲気に合いそうだわ」


姿見の前でターンしてみる。

白地に薄いピンク色の刺繍が施されたワンピース。

胸元にラインストーンもあしらわれていて、可愛らしさの中に華やかさも加味されている。

そして、スカートの裾部分がアシンメトリーになっていて、右脚部分が少し大胆なデザイン。

幼顔の私と、西洋彫刻のような端正な顔立ちの彼との食事。

愛らしさだけでなく、大人の雰囲気も必要だと思った。


服に合わせてローズクォーツのネックレスを身に着け、髪は緩めのハーフアップに。


久しぶりのドキドキ感。

だって、キャバクラで着飾っていた服とは雰囲気が違う。

あの時は、『女』を武器に男に媚びるようなメイクだったけど、今日は清楚にしなくちゃ。


日中はナチュラルメイクしか施して無かった私は、少し多めにアイラインを入れて、淡いピンク色のチークを乗せた。

そして、艶やかな発色を求めて、苺ジャムをイメージさせたグロスを塗った。


鏡に映る自分が別人みたい。

メイク術をあかりさんに教わっておいて本当に良かった。

やっぱりメイク本片手に自己流でするのとは違うもの。



メイクした事でほんの少し自分に気合いを入れた。

さっきの失敗と彼への御礼も兼ねて、少しでも楽しい食事にしないと……。


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