Love nest~盲愛~


ドレスアップした私は早鐘を打つ胸に手を当てながら、ゆっくりと1階へと向かった。

私の姿を見つけた今井さんは、すぐさま駆け寄って来て……。


「まぁ!えな様、とてもお似合いですよ~。今宵は素敵な夜になる事でしょう」


彼女の言葉にほんの少し心の足枷が外れた気がした。

自分で選んだ服が他人の目にどう映るのか、本当は心配でならなかった。

勿論お世辞だと解っていても、好意的な彼女の言葉にほんの少し勇気が湧いた。


あの人に気に入られる為には、最低でも今井さんの印象が良くないと……と。


今井さんに柔らかい笑みを浮かべた、その時。


「若のお帰りです!!」


玄関ホールの方から奥村さんの声が響いた。

すると、今井さんと数人の使用人さんが玄関ホールへと向かう。


「えな様っ、ご一緒にお出迎え下さいませ!」

「あっ、はい!」


他人事のように見守っていた私だったが、彼女の言葉に反応する。

あの人をきちんとお出迎えしないと。

私も皆に倣って、急ぎ足でホールへと。


黒塗りの高級外車がゆっくりとエントランスに到着した。

優雅な所作で後部座席のドアを開ける白川さん。


「お疲れ様でした」


深々と腰を折る白川さんの横に、濃紺のスーツを身に纏った彼が姿を現した。


「お帰りなさいませ、若」

「お帰りなさいませ、坊ちゃま」


奥村さんと今井さんが丁寧にお辞儀する隣りで、私もまた深々とお辞儀をすると、


< 64 / 222 >

この作品をシェア

pagetop