Love nest~盲愛~
「ッ?!」
自分の足下にスッと黒い影を感じた。
そこへ視線を向ければ、磨き上げられた革靴が……。
「おかえりっ………なさい………ませ」
恐怖のあまり、絞り出した声もその場に呑み込まれてゆく。
周りにいる使用人さん達の視線が私達に集中する中、彼は無言のまま私を見下ろしている。
彼の癇に障る事をしてしまったのかしら?
私が出迎えた事が意外だったから?
彼の顔を見上げる事が出来ず、視線が足下に固定されたまま。
どうしていいのか分からず、ゆっくりと顔を持ち上げると、彼は何事も無かったかのようにホール内へと歩き出した。
「えな様?」
「っ?!」
今井さんに促され、彼の後を追うものだと認識した私は、すぐさま彼を追いかけた。
彼は優雅にホールを歩み進め、ウォッシュルームへと姿を消した。
そして、待つ事数分。
出て来た彼は今井さんにジャケット手渡し、私を見もせず、ダイニングルームへと。
さっき、何か言いたかったのでは……?
腑に落ちない私は、優雅に歩く彼の背中を見つめていた。
その後、いつも以上に豪華なお料理がテーブルに並んだ。
時折、今井さんのアシストもあって会話をする事もあったが、彼は終始無言のまま。
しかも、私と視線を一度も合わせる事無く……。
存在を無視されているようで、胸が痛い。
彼に嫌われてしまったのかしら?
好かれる以前の問題なの……?
1時間程の食事が漸く終わりを告げ、彼と共に2階へと。
彼の後を追う形で2階に上がると……。