君と想い出をもう一度
広大な敷地を横切り、門までたどり着くとボルドーが二人を待ち構えていた。


「おはよう、ミュウ」

明けの紫の光の中、ボルドーが優しく笑う。

しかしミュウは目を伏せた。


「ごめん…なさい」


分からない、という状況に心底嫌気が差したのだろう。

目に涙が溜まっている。


「ごめんなさい…私…貴方のこと、分かりません…」

一粒、二粒と続き次々に雫が落ちた。


「貴女が泣くことはありませんよ」

笑みを崩さず、ボルドーが人差し指でミュウの涙を拭う。

「貴女には笑っていて欲しい」

顔を上げ、少々無理矢理だがにっこり笑うミュウ。


「さあラルム様、荷物を用意しておきましたよ。【証】は持ちましたか?」


ボルドーがラルムに向き直った。


「はい」


返事をしながら首にかけた乳白色の石を握りしめる。

「先生、一つだけ聞いてもよろしいですか」


ミュウが嬉しそうに花や鳥を眺めているのを横に見やりながら、ラルムが尋ねた。


「何でしょう?」

「先生は───ジーヴル一族は、何者なんですか」


少しの間。

ラルムにはひどく長く感じた。

やがてボルドーがゆっくり口を開く。

「……時を、操る者です」
そういう能力───魔力があるのか。


「私たちが虚無にかかると結晶になって散らばるのは、そのためです。様々な【思い】が結晶となり、散らばる。…ああ。ミュウは一族の中でも秀でているのですよ」


「秀でている、とは…」


「治癒力が高い。ミュウの涙には高い治癒力が備わっています。しかしミュウは簡単には泣かない娘です───本当に【想った】時、以外では」 


ミュウをお願い致します、と深々と頭を下げる一人の父親。


「必ず、元に戻します」


ラルムは力強く誓い、荷物を受け取ってミュウの手を取った。
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