上司に秘密を握られちゃいました。

「どういうことでしょう?」

「あの人、ちょっとおせっかいが好きでね」


言葉を濁す真山さんに首をかしげながら、そのまま先へと急いだ。


早乙女様はチョコレート売り場にいた。

大きな体で一目瞭然。
まして、バレンタインを前にしたこの時期に、女の子が溢れるこの場所では、目立つとしか言いようがない。


「来た来た。藍ちゃん、おひさ」

「いらっしゃいませ」


丁寧に頭を下げると、ブーンと甘い香水の匂いが鼻をくすぐる。

その横で、昨日まで一緒に働いていた人たちが、私をチラチラ見ているのが気になった。


「あの子、営業本部なんだって」

「へぇ、誰と寝たのかしら」


ボソッとつぶやく社員たち。

派遣から一気に本部に入ったことで、多少の嫉妬や僻みがあることは覚悟していた。
だけど、露骨に耳にすると胸が痛い。
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