上司に秘密を握られちゃいました。
そんなことはない。
たしかに制服ファッションショーの企画のために私はここにいるけれど、売り場全部を取り仕切っているところなのだから、真山さんのようにヘルプに出るのは当然だ。
「楽しいですから、大丈夫です」
真山さんに頭を下げ、催事場に再び向かうと、彼は後を追ってきた。
「藍華、あのさ……」
「今日、真山さんの家に行ってもいいですか?」
真山さんの言葉を遮ると、彼は驚いている。
「ん? そりゃ、もちろん」
だけどその後、すごくうれしそうに微笑んだ。
「制服、似合ってる。それじゃ、頼んだよ」
それだけ言い残して、彼は別の売り場に行ってしまった。
今……『似合ってる』って言ったよ、ね?
真山さんのたった一言で、ドキドキしてしまう私は、やっぱり恋愛初心者なのかもしれない。