上司に秘密を握られちゃいました。
「頑張ろ」


あの社員たちがいるところに戻るのは気が重かったけれど、もういいや。

私は仕事を認めてもらえて、本部に入れたはず。
自信を持って働こう。

それに、おそらく真山さんが釘を刺してくれたから。


「藍華!」


催事場の手前で美晴と鉢合わせした。


「あれ? 売り場?」

「催事のお手伝いに行くの」

「そう、なの……」


美晴の顔が曇る。
たしか美晴も催事担当だったはず。

小さなバッグを持っているから、休憩から帰ってきたところだろう。


「私、なんか言われてるよね」

「藍華……」


美晴が言いにくそうにしているのは、そういうことだろう。


「大丈夫。私は自分にできることを精一杯やるだけ。
噂なんて気にしてたら、なにもできないもん」


本当はくやしい。
別に女の武器を使ってのし上がったわけじゃない。
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