上司に秘密を握られちゃいました。
「西里さんは、あがっていいよ」
「はい。お疲れ様でした」
就業時間の十八時になっても、誰も立ち上がる人はいない。
もちろん、真山さんも。
気を利かせた部長が声をかけてくれて、フロアを出た。
本当は私も一緒に残業して、役に立ちたい。
だけど、今の能力では到底無理だった。
言われたことをこなすことしかできなくて、かえって足手まといになってしまう。
更衣室で着替えると、すぐに会社を出て真山さんの家に向かった。
途中のスーパーで買い物をして、食材もそろえた。
早乙女様の言っていたように『ア、ゲ、ル』なんて当然言えないけれど、私も負けない。
佳乃さんが復縁したくても、彼は渡さない。
私だって、真山さんのことか好きだから。
動揺だけだった気持ちが、いつの間にか、そう変化していた。